Dd診断力てすと『口腔内の有茎性腫瘤』デンタルダイヤモンド 2017年5月号

横尾 聡 Satoshi YOKOO
池 嘉子 Yoshiko IKE
清水崇寛 Takahiro SHIMIZU
群馬大学大学院医学系研究科
口腔顎顔面外科学講座・形成外科学講座


図❶ 口腔腫瘤。左側下顎歯肉に65×45mmの有茎性腫瘤が認められたが、
基部は歯肉に限局しており、周囲組織への進展は認められなかった

a:造影MRI(T1/Gd-MRI)では、腫瘤全体に造影効果が認められ、とくに辺縁で著明であった

b:T2/STIRでは、辺縁高信号、内部は中等度信号を呈していた

図❷ a、b 画像所見


患者:60歳、男性
主訴:歯肉が腫れている
既往歴:食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、喘息・アレルギーなし
家族歴:特記事項なし
生活歴:飲酒(-)、喫煙 20~40歳、10本/day
現病歴:20XX年4月、左側下顎歯肉の腫瘤を自覚したが、疼痛などの自覚症状がないため経過を観察していた。同年9月に腫瘤の増大と疼痛が出現したため、精査加療目的に群馬大学医学部附属病院歯科口腔・顎顔面外科へ紹介となった。
現症:顔貌は左右非対称で、左頬部の膨隆が認められた。左側オトガイ神経障害は認められなかった。左側下顎歯肉に65×45mmの有茎性腫瘤が認められた。腫瘤は肉芽状・易出血性・弾性硬で基部は歯肉に限局しており、周囲組織への進展は認められなかった(図❶)。両側顎下リンパ節の腫大が認められた。
画像所見:造影MRI(T1/Gd-MRI)では腫瘤に造影効果が認められ、STIRでは辺縁高信号、内部は中等度信号を呈していた(図❷)。PETでは腫瘤に一致した部位に異常集積を示し、パノラマX線写真およびCT画像からは、腫瘍存在部位に一致した下顎骨に、平滑型の骨吸収像が認められた。また、CT画像にて両側頸部に造影効果のある腫大したリンパ節の存在を確認し、PETでも同部位に異常集積が認められた。エコーでは、リンパ節の腫大と内部の血流増加が確認された。
初診時血液検査:末梢血、生化学、腫瘍マーカーのいずれも、異常値は認められなかった。

Q 最も疑われる疾患名は?

① エプーリス
口腔悪性腫瘍(上皮系)
③ 口腔悪性腫瘍(間葉系)

IgG4関連疾患に起因した線維性腫瘤