Dd診断力てすと『左側舌背部の無痛性の腫瘤』デンタルダイヤモンド 2017年6月号

3.神経鞘腫

神経鞘腫は、外胚葉由来のSchwann細胞を起源とし、全身の良性軟部組織腫瘍の10.2%を占め、血管腫、脂肪腫に次いで多いとされている。しかし、顎口腔領域では、本腫瘍中の1.5%を占めるにすぎないとされている。なお、顎口腔領域では舌に発生する頻度が最も高いと報告されている。好発年齢は10~20歳代であり、男女差はないが、やや女性に多い。臨床所見として、無痛性、弾性硬の腫瘤であり、正常粘膜に被覆され、境界明瞭であり、一般的に臨床症状からの鑑別診断は困難な場合が多い。

処置および経過

全身麻酔下にて腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は被膜に覆われており、周囲組織との癒着はなく摘出は容易だった(図❸)。なお、末梢神経との関係は不明であり、母神経の確認はできなかった。摘出物は被膜構造を有する腫瘍で、割面は白色充実性だった(図❹)。病理組織学的には、紡錘形細胞が束状に配列して密に増生する像がみられ、核の柵状配列が目立つ(図❺)。免疫染色では、S-100タンパクがび慢性に陽性を認める(図❻)。予後は良好とされているが、稀に再発、悪性化した報告例がある。

図❸ 術中所見。被膜を有する腫瘤で、周囲組織との癒着はない

図❹ 摘出物所見。腫瘤の割面は、
白色充実性

図❺ HE染色(強拡大)。核の柵状配列が認められる

図❻ S-100タンパク(弱拡大)。S-100タンパク抗体陽性を示す

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です