- 国内で新たに認可されたアルチカイン製剤「セプトカインⓇ」の特徴を教えてください。 福島県・H歯科
-
アルチカインは、ヨーロッパでは50年前、米国では25年前より使用されており、現在、両地域で最も広く用いられている局所麻酔薬です。
薬液が骨の中へすみやかに浸透するため、麻酔が「速く、よく効く」ことが最大の特徴です。アルチカインは、時に麻酔効果を得るのが困難な下顎大臼歯に対しても高い奏効率が得られ、さらに上顎の頰側に浸潤麻酔で投与すると、口蓋側の軟組織まで麻酔効果が広がるといわれています。
通常、口蓋への麻酔は強い痛みを伴いますが、頰側に注射したアルチカインの効果が口蓋まで広がれば、抜歯などで口蓋へ追加投与が必要となった場合でも注射に伴う痛みは大きく低下します。また、他の局所麻酔薬が肝臓で分解されるのに対し、アルチカインはおもに全身の血液中で分解されるので代謝が早く、過量投与や反復使用による中毒は発症しにくいと考えられています。
ただ、セプトカインⓇの本体は4%アルチカインであり、オーラⓇ、キロカインⓇなどのリドカイン製剤(2%リドカイン)、シタネスト-オクタプレシンⓇ(3%プロピトカイン)、スキャンドネストⓇ(3%メピバカイン)と比べて麻酔薬の濃度が高いことは頭に入れておきましょう(表1)。また、リドカイン製剤と同様にアドレナリンを含んでいるので、高血圧、心不全、動脈硬化、糖尿病、甲状腺機能亢進症などの循環器疾患を有する患者への投与では、生体監視モニタを利用してバイタルサインを確認しながら麻酔することをお勧めします(表2)。
さらに、笑気吸入鎮静法や表面麻酔などの併用は、安心・安全な麻酔を行うために有効です。しかし、小児に対する臨床試験は行われておらず、安全性、有用性はあきらかではありません。また、下顎孔伝達麻酔に用いると知覚異常が生じやすいとの報告もありますが、伝達麻酔に伴う神経損傷は手技に基づくものが多いため、他の麻酔薬と同程度と考えられています。
詳しくは、書籍『新たなる歯科用局所麻酔薬 アルチカインを知ろう! 』をご参照ください(図1)。砂田勝久
日本歯科大学生命歯学部 歯科麻酔学講座

▽月刊デンタルダイヤモンドのバックナンバーはこちら▽
https://www.dental-diamond.co.jp/list/103
▽Q&Aのバックナンバーはこちら▽
https://dental-diamond.jp/qanda.html
学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年9月号より「国内で新たに認可されたアルチカイン製剤」についてです。