- 当院では半導体レーザーを導入し、今後、臨床で使用していきたいと思います。最近、非外科的歯周治療において半導体レーザーを活用できると耳にしましたが、どのように使用すればよいのか教えてください。 愛媛県・R歯科医院
-
1.LANAPⓇという非外科的歯周治療
近年、半導体レーザーを用いた非外科的歯周治療については、多くの報告があり、非外科的歯周治療に半導体レーザーは効果的であることが示されています。しかし、再現性があり、信頼性の高いレーザープロトコルが確立されていないために研究間で矛盾も生じています。そのため、まだまだ議論の余地があり、標準化されたレーザープロトコルが望まれています1)。
そこで、筆者はアメリカのミレニアムデンタルテクノロジー社が提唱している、Nd-YAGレーザーを用いたLANAPⓇという非外科的歯周治療を参考にして、半導体レーザーによる非外科的歯周治療を行っています。LANAPⓇの手技はミレニアムデンタルテクノロジー社のHPに紹介されており、動画も掲載されていますので、参考にされるとよいと思います。2.成功のポイントは歯周基本治療
本稿では、筆者が行っているLANAPⓇに準じた方法を簡単に紹介します。治療の流れは表1のとおりです。
表1は筆者が行っている手技ですが、基本的にはLANAPⓇそのものです。この半導体レーザーを用いた非外科的歯周治療を成功に導く最大のポイントは歯周基本治療です。当たり前ですが、この基本的なことが最も大切であると考えます。どれほど優れたレーザーであっても、歯周組織を破壊した原因が取り除かれないかぎり歯周組織は再生せず、レーザーの効果も最大限発揮されないからです。表❶ 筆者の半導体レーザーを用いた非外科的歯周治療の手順
①プロービングにより歯周ポケットの深さや歯根形態、歯石を触知する。 ②半導体レーザー(2W、連続照射モード)を用いて歯周ポケット内の病変組織(内縁上皮)を除去する。チップの動かし方は水平方向の往復運動である。 ③スケーリング・ルートプレーニングを行い、根面を滑沢にして無毒化を図る。このときに、超音波スケーラーをポケット底部の歯槽骨に当てて歯槽骨の新鮮面を出す。 ④半導体レーザーを0.5Wの出力(連続照射モード)で歯周ポケット底部の歯根膜を賦活化する。
そのときに歯周ポケット内が血液で満たされてくるが、この血液のなかに、歯周組織再生に必要な歯根膜由来の未分化間葉系幹細胞が含まれているといわれている。⑤ガーゼなどを用いて歯肉を圧迫し、未分化間葉系幹細胞を歯根面に付着させるため、血餅を形成する。 ⑥必要に応じて咬合調整や暫間固定を行う。 したがって、歯周基本治療では、問題を引き起こした原因を徹底的に除去する必要があります。また、歯周組織再生療法の歴史を振り返ると、上皮との闘いでもありました。上皮の細胞は外敵(細菌など)から身を守るため、1日0.5mmというものすごいスピードで遊走して傷口を封鎖しようとします。
そのため、歯周ポケット搔爬、新付着術(ENAP)、歯肉切除術、歯肉剝離搔爬術、歯周形成手術などの歯周外科治療の創傷治癒形式は、歯根膜由来の細胞が活躍する前に上皮細胞が歯周ポケット内に入り込んできてしまい、長い上皮性付着になります。
3.歯根膜由来の細胞を根面に付着させる
しかしながら、上皮性付着が起こると歯根膜由来の細胞が根面に付着できず、歯周組織再生が妨げられます。Melcher AHらは、「歯根面に形成される付着様式は、最初に歯根面へ付着する細胞の種類(上皮細胞、結合組織由来の細胞、歯根膜由来の細胞、骨細胞)によって決定される」と述べています2)。
これらを踏まえ、LANAPⓇという手技においては、歯周ポケットの内縁上皮を除去し、病原因子を徹底的に取り除き、歯根膜を賦活化させ、歯根膜由来の細胞を根面に付着させることが大切になると思います。【参考文献】 1) Magdalena Pawelczyk-Madalińska, et al.: Impact of Adjunctive Diode Laser Application to Non-Surgical Periodontal Therapy on Clinical, Microbiological and Immunological Outcomes in Management of Chronic Periodontitis: A Systematic Review of Human Randomized Controlled Clinical Trials. J Inflamm Res, 15: 14: 2515-2545, 2021.
2) Melcher AH: On the repair potential of periodontal tissues. J Periodontol, 47(5): 256-260, 1976.
迫田賢二
●鹿児島・さな歯科クリニック

▽月刊デンタルダイヤモンドのバックナンバーはこちら▽
https://www.dental-diamond.co.jp/list/103
▽Q&Aのバックナンバーはこちら▽
https://dental-diamond.jp/qanda.html
学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年3月号より「半導体レーザーで非外科的歯周治療を行うポイント」についてです。