Q&A 法律 自転車の運転にかかわる罰則強化|デンタルダイヤモンド 2025年1月号

Q&A 法律 自転車の運転にかかわる罰則強化|デンタルダイヤモンド 2025年1月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年1月号より「自転車の運転にかかわる罰則強化」についてです。

スタッフが自転車通勤をしていますが、先日、スマートフォンを見ながら運転しているところを目撃しました。法律的に何か罰則など生じる可能性はありますか。 千葉県・W歯科

 スタッフの行為は、令和6年11月に施行された改正道路交通法に違反する可能性があります。
 近年、自転車の運転中の携帯電話・スマートフォンの使用等(いわゆる「ながらスマホ」)に起因する交通事故が増加傾向にあります。また、自転車を酒気帯び状態で運転した際の交通事故は、死亡・重傷事故となる場合が多いといわれています。このような近年の道路交通事情を考慮し、自転車による交通事故防止を目的として道路交通法が改正されました。
 改正の内容は、①ながらスマホの禁止、②酒気帯び状態での自転車運転の規制強化の2点です。
 ①は、自転車を運転中に、スマートフォン等を手で保持して、電話をする行為や画面を注視する行為が禁止されました。ただし、停止中の行為は禁止されません。これに違反した場合、6月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されるおそれがあります。また、上記違反行為により交通の危険を生じさせた場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
 ②は、改正前から酒気帯び状態で自転車を運転することなどは禁止されていましたが、違反した場合の罰則規定がありませんでした。そこで、今回の改正により罰則規定が新たに設けられました。
 具体的には、体内のアルコール量が一定程度以上の状態で自転車を運転した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。
 また、酒気帯び運転者に自転車を提供した者についても同様に、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。
 さらに、酒気帯び運転車に酒類を提供した者や同乗者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
 なお、前述の①、②の罰則の他にも、違反行為を繰り返すと「自転車運転者講習」の受講を命じられる可能性があります。
 ご質問について、スタッフの行為は、①の規制に違反する可能性が高い行為です。違反すると犯罪行為であり、何より危険ですので、厳に控えるよう指導すべきと思われます。
 ところで、自転車に関する道路交通法の改正としては、令和8年5月までに、交通反則通告制度(いわゆる「青キップ制度」)が導入されることになっています。交通反則通告制度とは、運転者が一定の比較的軽微な反則行為をした場合、一定期間内に反則金を納めると、裁判所の審判を受けないで事件が処理される制度です。
 交通反則通告制度は、すでに自動車による違反行為に導入されていますが、前述した自転車の①の行為も同制度の対象になる予定です。

井上雅弘
●銀座誠和法律事務所


デンタルダイヤモンド 2025年1月号 表紙

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