リンパ管腫は、リンパ管組織からなる腫瘍とされるが、リンパ管の形成異常と考えられている。International Society of Studying Vascular Anomaly分類により、近年はリンパ管奇形と呼ばれることも多い。口腔領域では舌に好発し、多くが海綿状リンパ管腫である。粘膜表層に生じたものは、透明な水疱状小腫瘤として認められる。組織への刺激や感染により、急激に腫大する。
嚢胞状リンパ管腫では、OK-432(ピシバニール®)による硬化療法が有効であるが、海綿状リンパ管腫では効果に乏しい。外科的切除が選択されても、正常な組織内へ広がっていることから、すべてを切除することは困難であり、治療に難渋することはいうまでもない。
臨床経過
- 4歳;初診。男児は、元気なときには舌の違和感がないようだが、遊び疲れや感冒症状が出現すると巨舌となり、痛がるとのことであった。頸部の腫脹は小児外科にて嚢胞状リンパ管腫と診断され、連続した同一疾患と考えた。
- 5歳;小児外科にて、右頸部嚢胞状リンパ管腫に対し硬化療法が行われた。
- 6歳;感冒症状とともに舌が著しく腫大(図❸)、数日間入院管理を要した。
- 7歳;舌への硬化療法を開始した。反応で舌は著しく腫大(❹)、3回目には一時的に気管切開を要した。その後も舌は腫大するが、入院管理を要するには至らなくなった。
- 10歳;舌が重たく、大きいと患児自身、容姿を気にするようになった(図❺)。
- 12歳;舌の硬化部を中心に舌部分切除を行った(図❻)。
- 14歳;舌が腫大する程度とその頻度は極めて少なくなり、舌が軽く、動かしやすくなった(図❼)。数年経過後も病態に変化なく、あきらかな機能障害はない。
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図❹ 7歳時、OK-432局所注入後1週間の舌
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図❺ 10歳時の舌、患児が容姿を気にする
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図❻ 12歳時、硬化の強い部分をM字形に切除
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図❼ 14歳時の舌。開咬もない
1.舌リンパ管腫