歯科医師が病気を見つけるとき 21|デンタルダイヤモンド 2000年9月号

●東海大学医学部口腔外科学教室 佐々木次郎 + 関谷 亮

脳梗塞後

歯が痛ければ抜歯する

◆◆◆ 脳梗塞後の患者の抜歯 ◆◆◆

国立療養所神奈川病院から、73歳の脳梗塞後の男性患者さんを紹介いただいた。手足に不自由があるが、毎日農作業をしているとのことである。都会ではありえないことであろうが、このあたりの農家では普通のことである。それが生きがいなのだから。何とか痛い歯を抜いてあげてください、との主旨である。


読者のために処方箋を下記に転記した。

Rp1シグマート15mg
ペルジピン60mg
2パナルジン200mg
3ワーファリン3mg
4リポバス1T
5レニべース5mg

来院された患者さんを拝見すると、元気な方である。地元の歯科医師からの診療情報提供書もあり、「ワーファリン®とパナルジン®が投与されていますから、東海大学病院で抜歯をお願いします」との連絡がありがたい。トロンボテストは(TT)18%であるが、抜歯はやさしいので服薬をつづけていただき、抜歯をすませた。

ワーファリン®とかパナルジン®が投与されていると、抜歯などに過度に反応する患者さんも医師もいる。もちろん歯科医師もいる。無知で無関心なことに比べたらはるかによいことであるが、過度の心配をすることもない。ワーファリン®やパナルジン®は、その患者さんに必要であるから投与されているわけで、必要がなければ投与はされない。

◆◆◆ 処方箋は一般名あるいは商品名で記載してよい ◆◆◆

服薬の内容を右ページに示しているのはそのためである。調剤薬局が多種の薬剤を備蓄しなくていいように、厚生省の指導により一般名での処方でも商品名の処方でも同一製品であれば投与してよいことになっている。今回の処方例のなかで、たとえば降圧剤のペルジピン®といえば読者は誰でも知っているが、他社のもの、たとえばロンドリン®といわれるとわからないかもしれない。少なくとも筆者はわからないので、商品名を列挙した。

◆◆◆ 患者さんはワーファリン®やパナルジン®を勝手に中止しないでください ◆◆◆

ワーファリン®やパナルジン®を服用していれば、抜歯の後で血が止まりにくいのは当然である。抜歯後に出血しても死ぬことはない。服薬を中止して心臓がパクパクすれば死ぬことがある。患者さんには、「勝手に止めたりしないで前もって相談しなさい」とアドバイスすることである。生半可な知識から自分でワーファリン®を服薬するのを止めて、おかしくなった例は少なくない。なんと馬鹿なことかと呆れてしまうことになる。

ニコランジル
狭心症治療剤剤

コバインター
シグマート*1の上
シグランコート
シベラント
シルビノール
ステンベルガー
ニコランジス
ニコランタ
ニコランマート
ニトルビン

ワルファリンカリウム
抗凝血剤

アレファリン
ワーファリン *3

シンバスタチン
高脂血症治療薬

リポバス *4

マレイン酸エナラプリル
本態性高血圧症治療薬

レニベース *5

塩酸ニカルジピンジ
ヒドロピリジン系Ca拮抗剤

アカルジピン
アプロバン
アポジピン
イセジピール
カルトラン
ケニカルノン
コバニカルLA
コポネント
サリペックス、サリペックスLA
セパジピン
ツルセピン
ドローマー
ニカジルスL
ニカルジレート
ニカルピン
ニカルン
ニコデール
ニスタジール
バソセダン
パルチデールL
パルペジノン
プレアルピン
ペルジピン  *1の下
ミタピラ
ラジストミン

塩酸チクロピジン
抗血小板剤

アンブレート
イパラジン
ジルペンダー
ソーパー
ソロゾリン
チクピロン
ニチステート
ネオピジン
パチュナ
パナピジン
パナルジン  *2
パラクロジン
ピエテネール
ピクロジン
ピクロナジン
ヒシミドン
ビーチロン
ファルロジン
プロパコール
マイトジン
ロベタール
ロンドリン

※プルゼニド®はどなたでも知っている緩下剤。
センナという植物は知らないが、その抽出物が便秘に効くことは知られている。

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