2020年08月号 「左耳下腺咬筋部の腫脹と開口障害」
市川雄二 Yuzi ICHIKAWA
公益財団法人東京都保健医療公社 豊島病院 歯科口腔外科
〒173-0015 東京都板橋区栄町33−1
〒173-0015 東京都板橋区栄町33−1
図1 再来院時の顔貌所見
図2 MRI(造影T1強調像)。矢印:不均一に造影されている中に造影されていない部位を含む病変
患者: | 82歳、女性 |
主訴: | 左耳下腺咬筋部の腫脹と開口障害 |
現病歴: | 当科にて、今回受診の半年前に化膿性炎の原因歯であったを抜歯。その後、口腔内抜歯窩治癒状態は良好であったが、左咬筋部の圧痛と開口障害が持続していた。来院1週間ほど前より左耳下腺咬筋部に腫脹が出現。さらに腫脹が増大してきたので、精査、加療のため、当科を再来院した。 |
既往歴: | 高血圧症、糖尿病、大腸がん、転移性肺がん |
現症: | 身長153cm、体重46kg。栄養状態は良好。顔貌では、左耳下腺咬筋部に比較的硬い腫脹と、周囲に発赤を伴った20×20mmほどの自壊寸前の皮膚膨隆を認めた(図1)。また、口腔内にはあきらかな異常所見はなかったが、開口量は一横指で開口障害を認めた。 |
臨床検査所見: | 白血球数9,500/μL、CRP 0.41mg/dL、血糖251mg/dL、HbA1c 7.8% |
画像所見: | MRI(造影T1強調像)にて、不均一に造影されている中に造影されていない部位を含む病変が、左咬筋周囲に数ヵ所認められた(図2)。 |
Q | 最も疑われる疾患名は? |
1.悪性腫瘍 | |
2.顎関節疾患 | |
3.顎放線菌症 | |
4.口腔梅毒 |