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Q&A
保存(2014年2月号)
Q 若年者への歯髄保存療法
●深在性のう蝕について、保存か抜髄かで日々迷っています。とくに患者が若い場合、抜髄を避け、歯髄を保存させるためのポイントを教えてください。
──鹿児島県・M歯科医院
A
  日常の臨床で深在性う蝕の処置の際、歯髄を保存するか、あるいは除去するか判断に苦慮するケースにしばしば遭遇します。しかし若年者の場合、歯髄の修復、再生能は高く、適切な処置を行えば健全な状態で保存できることが示されています。歯を長期にわたって機能させるうえでも、歯髄はできるかぎり保存することが望ましく、さまざまな歯髄保存療法が試みられています1)
  深在性う蝕に対する歯髄保存療法成功のポイントは、(1)適応症の選択、すなわち可逆性、不可逆性歯髄炎の鑑別、(2)術中、術後の感染のコントロール、そして(3)可能な限り露髄を避けること、です。
適応症の選択
 臨床症状から歯髄の病態を把握することは非常に困難です。術前診査として、疼痛の既往、自発痛の有無、誘発痛の程度や持続時間、打診痛の有無等について十分に確認を行います。
  また、X線写真にて根尖部の異常所見(歯槽硬線の消失、骨硬化像等)の有無を確認し、これらの所見を参考に歯髄保存の可否を判断します。とくに症状が強く判断に迷う場合には、歯髄鎮痛消炎療法を応用した待機的診断の後、改めて保存療法を試みることも選択肢の一つでしょう。
  若年者の深在性う蝕では、暫間的間接覆髄法(IPC法、歯髄温存療法)が推奨されています2)。万が一、感染象牙質除去中に露髄した場合には、直接覆髄法を応用することになります。
暫間的間接覆髄法(IPC法、歯髄温存療法)
 暫間的間接覆髄法とは、感染歯質をすべて除去すると露髄する可能性の高い、深在性のう蝕症例で推奨されている歯髄保存療法です。本法は深部の感染象牙質を意図的に残したまま数ヵ月間(3ヵ月以上)覆髄剤を貼付し、軟化象牙質の硬化や修復象牙質の形成を期待し、その後リエントリーして残存感染歯質を除去し、最終修復を行うものです。段階的に感染象牙質を除去(Stepwise Excavation)することで、露髄を避けようとする方法です。
  処置のポイントは、う窩の開拡、感染歯質除去時にはできるだけ無麻酔で行い、露髄させないことです。感染象牙質の除去はう蝕検知液をガイドに、ラウンドバーを用いて低速回転、あるいは鋭利なスプーンエキスカベーターで注意深く行います。若年者では象牙質の軟化が深部にまで達しており、安易に除去を行うと露髄することもありますので、とくに注意が必要です。
  また、経過観察中の辺縁漏洩による再感染を防止するため、窩洞辺縁部の健全歯質の厚みを十分に確保することも重要なポイントです。覆髄剤を残置させた感染象牙質を被覆するように貼付し、接着性を有するグラスアイオノマーセメントで仮封します。さらに、コンポジットレジンで仮充填すれば、より安全です。
  数ヵ月の経過観察後、リエントリーし、仮封材、覆髄剤を除去します。残存した軟化感染象牙質を慎重に除去し、必要に応じて間接覆髄(裏層)を施し、最終修復処置を行います。
直接覆髄法
 もし感染歯質除去中に露髄したら、露髄部をよく観察します。膿性の滲出液が認められる場合は化膿性歯髄炎が疑われ、歯髄除去法の適応となります。感染象牙質を露髄部周囲に残らないよう、また切削片を歯髄内に押し込まないよう注意深く除去します。露髄面は次亜塩素酸ナトリウムにてケミカルサージェリーを行い、感染歯質削片等の汚染物質の除去と露髄部の消毒を行います。滅菌生理食塩水にて十分に洗浄後、滅菌小綿球にて乾燥、止血を確認します。その後、歯髄に圧力を加えないように覆髄剤で露髄部を覆い、グラスアイオノマーセメントで仮封、経過観察(1ヵ月)後、問題がなければ最終修復処置を行います。
  大きな露髄(2mm以上)や止血困難な場合は、歯髄の強い炎症が疑われますので、歯髄の一部除去(断髄)や抜髄の適応となります。
覆髄剤の選択
 これまでさまざまな薬剤や材料が覆髄剤として応用されていますが、現在最もよく使用されているのは水酸化カルシウム製剤です。とくに速硬性の材料(Dycal®〔Dentsply〕、Life〔Kerr/カボデンタルシステムズジャパン〕等)は操作性もよく、応用後、直接コンポジットレジン修復処置が可能で、審美性の要求される前歯部の処置や、小さなスポット状の覆髄に最適です。しかし、広範囲の場合や窩洞が湿潤な状態では応用が難しく、水酸化カルシウムペーストが適応となります。暫間的間接覆髄法ではタンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメントの使用も推奨されています。
  Mineral trioxide aggregate(MTA)は近年注目されているケイ酸カルシウム系水硬性セメントです。水酸化カルシウム同様、硬組織誘導能を有するとともに、湿潤な状態でも応用可能であり、また硬化後に良好な封鎖性を示すことが大きな特徴です。直接覆髄法では水酸化カルシウム製剤と同等かそれ以上の臨床成績が得られています。
  う蝕象牙質や感染歯髄から検出される細菌に対して殺菌効果の認められている3種混合薬剤(3Mix:メトロニダゾール、シプロフロキサシン、セファクロルあるいはミノサイクリン)の応用も可能です。ただしミノサイクリンは歯質の強い変色を伴いますので注意が必要です。基材としてαTCPセメントが推奨されています3)
患者へのインフォームド・コンセント
 歯髄保存療法の成功率は、必ずしも100%ではありません。しかし、若年者の歯髄は血流も豊富で治癒力も高いことが示されています。判断に迷う症例では、可能な限り保存療法を選択します。その際、治療と予後に関する患者への十分な説明と同意を得ること、さらに患者の治療法への理解と協力が必要なことは言うまでもありません。
【参考文献】
1) 吉羽邦彦:抜髄を避けるための歯髄保存療法のポイント.興地隆史,井澤常泰,石井信之,木ノ本喜史(編著),ライフステージと歯内療法 歯の長期保存のために.デンタルダイヤモンド社,東京,2013.
2) 日本歯科保存学会編:う蝕治療ガイドライン.永末書店,京都,2009:52-69.
3) 岩久正明,星野悦郎,子田晃一:抗菌剤による新しい歯髄保存法.日本歯科評論社,東京,1996.

吉羽邦彦新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔健康科学講座 う蝕学分野

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