歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

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徹底追求 どっちがどっち?
吸収性 VS 非吸収性
東京歯科大学 歯周療法学講座
齋藤淳 山田了
追求1比べてみよう、どっちがどっち?
組織再生誘導法(GTR)は、歯周治療の歴史のなかでも画期的な手法として脚光をあびています。最近では2次手術を必要としない吸収性メンブレンの登場によりGTR法の選択肢は増え、可能性はさらに広がりをみせています。そこで、吸収性メンブレンと非吸収性メンブレンのそれぞれの特徴を整理し、比較してみます。
表1 各種メンブレン
  製品名 製造元 主成分 吸収機序 吸収期間
非 吸


Gore-Tex
Periodonal Material
W.L.Gore & Associates
Flagstaff, AZ
e-PTFE
   
Titanium Reinforced(TR)
configuration
   
Augmentation Material    
吸 収

Resolut W.L.Gore & Associates
Flagstaff, AZ
乳酸
/グリコール酸
クレブス回路による加水分解 組織内8M
Guidor Matrix Barrier Guidor AB. Huddinge,
Sweden
組織内6M
Vicryl Ethicon, Inc.,
Somerville, NJ
組織内3M
ジーシーメンブレン (株)ジーシー、東京 組織内3-4M
コーケン ティッシュガイド
(株)高研 大阪
アテロコラーゲン
(仔牛真皮由来)
テンドンコラーゲン
(牛アキレス腱由来)
コラゲナーゼによる分解 組織内3-6M
BioMend Calcitec Carlsbad, CA テンドンコラーゲン コラゲナーゼによる分解 組織内4-8M
追求2どっちにしても、どんなもの?
1982年にNymanらによってGTR法の成功が報告されてから約15年が経過しました。GTR法で局所に歯根膜由来組織を誘導するうえで、保護膜(メンブレン)は重要な働きを担っています。当初から非吸収性のメンブレンが多く用いられてきました。非吸収性メンブレンとしてはe-PTFE膜が一般的です。
1988年になると、従来の歯周組織の再生を目的としたGTR法に対し、骨の再生をめざしたGuided Bone Regeneration(GBR)法が開発されました。GBR法はインプラントの領域で多く用いられ、インプラント療法の可能性を広げています。このGBR法は、GTR法とは臨床での目的が異なるので、使用するメンブレンもその構造を異にしたものとなっています。
さらに1990年代に入ると、GTR法で用いられるメンブレンとして、生体内で吸収されるものが開発されました。
追求3どこが、どれだけ、どう違う?
現在市販されている主なメンブレンの一覧を表1にします。吸収性メンブレンには大きくわけて、合成高分子材料である乳酸/グリコール酸共重合体のものと、天然高分子材料であるコラーゲンのものがあります。それぞれ吸収時期、吸収方法、周囲組織の反応性などに違いがあります。
●ポイント1 それぞれの特徴は?
以下、非吸収性メンブレンから順を追って述べます。
  1. 非吸収膜

    1)Gore-Tex Periodontal Material (GPTM: 図1)
    このメンブレンは、生体に親和性が高い四フッ化エチレン樹脂(e-PTFE)でつくられています。カラー部のOpen MicrostructureとOcclusive Membraneから構成されています。

    2)GTPM-Titanium Reinforced(TR:図2)
    GTPMに薄いチタンを埋入し、スペースメイキングが確実に行えるように改良されました。

    3)Gore-Tex Augmentation Material
    このメンブレンはGBR法に用いられ、骨組織を再生、増生するための膜です。
  2. 吸収性膜

    1)Resolut Regenerative Material(図3)
    乳酸/グリコール酸共重合体が主成分です。この膜の特徴としては、スペースメイキングを容易にする機能を有することや膜の重合が体温によって調整されることがあげられます。

    2)Guidor
    このメンブレンは乳酸/グリコール酸共重合体が主成分です。3部からなる膜構造が特徴的で、外側膜と内側膜の間隙に小突起があり、さらに内側膜表面にもある小突起によりスペースメイキングが可能になっています。

    3)コーケンティッシュガイド
    仔牛真皮由来のアテロコラーゲン溶液と牛アキレス腱由来のテンドンコラーゲン分散液を混合した複合化コラーゲン膜です。

    4)ジーシーメンブレン(図4)
    乳酸とグリコール酸を触媒で開環重合させ、シート状に成形した合成高分子材料です。3次元ポーラス構造を有しており、外側に存在する細胞が内部に侵入するのを阻止しています。

    5)Vicryl
    乳酸とグリコール酸共重合体膜です。膜構造は、糸を縦、横の格子状に組み立てた形態をなしています。

    6)BioMend
    牛アキレス腱由来のコラーゲンからなり、3次元マトリックス構造が特徴です。
 
図1 Gore-Tex Periodonal Material 図2 Titanium Reinforced(TR) configuration
図3 Resolut 図4 ジーシーメンブレン
●ポイント2 吸収性メンブレンの利点は?
非吸収性メンブレンを使用したGTRは予知性の高い歯周外科として定着しており、えて吸収性メンブレンを使用するからにはそれなりの利点がなくてはなりません。まず吸収性メンブレンの利点として第一に挙げられるのは、手術が1回でよいので、患者さんへの負担がより少ないということです(図5〜8)。しかし、これは次の理由から欠点ともいえます。:個々の患者さんの生体内でのメンブレンの吸収の時期がカタログどおりであるかの確認は不可能であり、非吸収性メンブレンの場合にはリエントリー手術時に可能であった組織の再生状態の肉眼での確認も不可能なことです。
図5 吸収性メンブレン(ジーシーメンブレン)の臨床例。成人性歯周炎患者。X線写真で遠心に垂直性の骨吸収が認められる。ブローピングデプスは7mmを超える。
図6 同部口腔内写真。遠心に3壁性の骨吸収が存在していた。
図7 試適膜で形態、大きさを合わせたのち、メンブレンを調整し応用した。2次手術(リエントリー)は必要なく、このまま治癒を待つ。
図8 同部X線写真、4年後。骨吸収部の不透過性が増しており、骨の再生が示唆される。ブローピングデプスも3mmに改善した。
他に利点としては、吸収性のメンブレンの種類にもよりますが、露出による弁の退縮等のトラブルが比較的少ないようです。
さらに、後発の利点ともいえますが、メンブレンに固定用の縫合糸がすでに組み込まれているものもあり、操作性の点で優れていることも挙げられます。表には示しませんでしたが、最近開発された吸収性メンブレンではチェアーサイドで重合し、自由に成形し、縫合糸なしで必要な部位に応用できるもの(ATRISORB , ATRIX Laboratories, Inc.)もあり、今後さらに使いやすい製品も出てくることが予想されます。
●ポイント3 非吸収性メンブレンは必要ないのか?
吸収性メンブレンの臨床応用も進み、これまでのデータからすると、非吸収性のものに匹敵する性能を示しているといってよいでしょう。上述したように利点も多いので、今後すべて吸収性メンブレンだけになるのかと言うと、そうでもなさそうです。非吸収性メンブレンはGTRにおけるスペースメイキングの点では優れています。それに加えて、適切な時期に吸収を期待する必要がないことから、必要なだけメンブレンを局所に置いておくことができるので、たとえばGBRのように長期間応用する必要がある場合などは非吸収性膜を使用したほうが確実と言えるでしょう。
これからGTR法に取り組もうとする方は、最初は非吸収性メンブレンを使用し、リエントリー時に再生組織を確認してみることをお勧めします。経験を少し積んでから、症例に応じて吸収性メンブレンも併用していくというのも一つのやり方ではないでしょうか。
追求4比べてみたら、どっちがどっち?
従来の歯周外科では得ることはほとんど不可能であった組織の”再生”を現実のものとしたGTR法は、歯周治療の未来を感じさせるものとなりました。ここまで広く普及した陰には非吸収性メンブレンの功績があります。最近では、吸収性メンブレンの研究が進み、GTR法がより応用しやすくなってきているともいえるでしょう。今後は、メンブレンに抗菌剤やBMP、growth factorなどを組み込んだものも登場し、より確実な再生が期待できるようになると思われます。基本的な性能が十分であれば、扱いやすさも重要です。メンブレンの硬さ、形態、縫合糸も含めた固定のしやすさなどは実際の臨床ではかなり大きなポイントといえます。上述した非吸収性、吸収性メンブレンの特徴をよく理解し、症例に応じた使い分けも重要となります。
メンブレンそのものの性能も大切ですが、ここで再確認しなければいけないのは、私たち術者の歯周治療の技量です。いかにメンブレンが応用しやすくなったとしても、正確な基本手技によって使用されなければ、成功に導くことは難しいでしょう。
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