DHstyle 2019年4月号 特集2
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 米国の歯科衛生士は歯科医院におけるチームの重要な一員として、おもに予防歯科治療を行うことで患者の口腔衛生維持を助ける役割を担っています。米国のDHプログラムにおいて、健康増進、健康維持、リスクアセスメントは、主要な項目としてカリキュラムが組まれています1)。 米国の歯科衛生士業務は、病因となるさまざまなサインや症状を理解し、より多くの情報をもとに、個々の患者のニーズに合った予防治療や口腔衛生指導を行うことが中心です。歯科衛生過程 Dental Hygiene Process of Care(歯科衛生過程)は、それぞれの患者のニーズに合ったフレームワーク(枠組み)を作る、歯科衛生士業務を行ううえでの大切なプロセスです。歯科衛生士は、口腔衛生や口腔疾患など、患者が抱えている問題に対応するために、その業務囲内においてどのような治療が適切かを決める「クリティカル・ディセジョン・メーキング」のスキルを用いています。これは歯科衛生過程の5つの要素である、Assessment(アセスメント)、Dental Hygiene Diagnosis(歯科衛生診断)、Planning(計画立案)、Implementation(実施)、Evaluation(再評価)から成り立っています。1.アセスメント アセスメントとは、患者の健康状態などを総合的に評価することです。多くの情報を収集し、分類・整理します。さらに、クリティカルシンキングという思考をつねにもち、さまざまな角度から問題を解決するために、何が必要かを考えることも重要です。また、アセスメントにおける情報は、必ずエビデンスをもとに収集しなければなりません。2.歯科衛生診断 歯科衛生診断とは、徹底的に行ったアセスメントをもとに患者に影響している問題をあきらかにし、診断に結びつけるプロセスです。定義としては“専門的な教育を受けた資格のある歯科衛生士により、顕在または潜在的な口腔衛生にかかわる問題をあきらかにすること1)”となっています。3.計画立案 計画立案では、歯科医師により作成された総合的な治療計画に組み込まれるためのDental Hygiene Treatment Plan(歯科衛生士治療計画)を、歯科衛生診断をもとに作成します。歯科医師と歯科衛生士が協力して患者のニーズに合った総合的な治療計画を立てることで、きめ細やかな診断と治療をもたらします。4.実施 実施では、以上の課程を踏まえて患者が抱える問題に対応します。以下に例を示します。患者:72歳、男性、コケイジャン(コーカソイド)症状:臼歯部歯頚部に多数の茶褐色および軟化したエナメル質のう蝕がみられる。心疾患のための投薬による口腔乾燥症を伴っており、緩和するために日常的に飴を舐めている歯科衛生診断1:多発性う蝕歯科衛生診断2:口腔乾燥症治療1:クラス5(歯頚部)のコンポジット米国の歯科衛生士業務70DHstyle 2019 04

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