ホワイトニングの変遷:チームで成功させるホワイトニング-壁を乗り越えるポイントと臨床テクニック-

デンタルダイヤモンド社より発刊されている書籍の選りすぐりのコラムの一部を紹介する記事です。今回は、『チームで成功させるホワイトニング-壁を乗り越えるポイントと臨床テクニック- 』コラム「JUMP UP!」より「ホワイトニングの歴史」に関する内容をお届けします。

 近年、ホワイトニングは日本にも広く浸透し、多くの人がその存在を知るようになった。また、多くの臨床家や研究者の努力によって歯科医師の管理のもとで実施されるホワイトニングは歯科医療として定着し、美容と差別化される動きが出てきた。しかしながらホワイトニングは決して新しいものではなく、1844年にはすでに歯を漂白する取り組みが行われていた(表1)。

表1 歯の漂白法の変遷1)

報告年ホワイトニング剤開発者
1844年ミョウバンBerdmore
1848年次亜塩素酸カルシウムDwinelle
1848年次亜塩素酸ナトリウムWeatcott
1868年シュウ酸Atkinson
1884年30%過酸化水素水Harlan. AW
1889年過マンガン酸カリウムKirk. EC
1895年25%過酸化水素エーテル溶液Westlake. A
1920年過酸化ナトリウムPrinz.H
1938年過ホウ酸ナトリウムSalvas. JC
1963年過ホウ酸ナトリウムと過酸化水素Nutting. EG & Poe.GS
1989年過酸化尿素Haywood. VB & Heymann.HO
1991年過酸化水素+触媒(Shofu Hi-Lite)Friedman
※触媒…光触媒:硫酸マンガン、化学触媒:過硫酸水素カリウム

 過酸化尿素を使用したホームホワイトニングが製品化されたのは1989年で、Omni International(現3M)から「White & Brite」として発売された。また、過酸化水素を使用したオフィスホワイトニングが製品化されたのは1991年で、アメリカのShofu Dental Corporationから「Hi-Lite」として発売された。本製品は漂白作用を促進するために化学触媒と光触媒が含まれていることが特徴となっている。
 歯の漂白は、ブリーチング(Bleaching)と呼ばれ学術用語として現在も用いられている。しかし、ブリーチングは強い薬品を使って髪の毛や衣類の色素を抜くというイメージがあるため、1990年にアメリカでホワイトニング(Whitening)という言葉が用いられるようになり、安全に安心して歯を漂白するというイメージが広がった。
 日本でも厚生労働省の認可を受けオフィスホワイトニング、ホームホワイトニング製品が発売されている(表2)。

表2 日本におけるホワイトニング剤の販売状況

発売年製品名販売会社(製造元)分類
1998年ハイライト松風(松風)オフィスホワイトニング
2001年NITEホワイト・エクセルデンツプライシロナ
(フィリップス)
ホームホワイトニング
2004年ハイライトシェードアップ松風(松風)ホームホワイトニング
2006年オパールエッセンスウルトラデントジャパン
(ウルトラデント)
ホームホワイトニング
2006年ピレーネモリタ(ニッシン)オフィスホワイトニング
2009年ティオン ホームジーシー(ジーシー)ホームホワイトニング
2010年ティオン オフィスジーシー(ジーシー)オフィスホワイトニング
2018年ティオン ホーム プラチナジーシー(ジーシー)ホームホワイトニング
2018年オパール エッセンス ブーストウルトラデントジャパン
(ウルトラデント)
オフィスホワイトニング

 日本のホームホワイトニング製品の主成分はいずれも10%過酸化尿素であるため基本的な漂白効果は同じであるが、そのジェルの味や性状、付属しているトレーシートの特徴などが異なるため、選択肢が広がった。また、2018年に発売されたティオン ホーム プラチナ(ジーシー)の主成分は10%過酸化尿素であり従来製品と変わらないが、ジェルの基剤を改良し、過酸化尿素が歯質に移行しやすくしたため、従来製品より早く漂白効果が得られるようになっている。
 オフィスホワイトニング製品の主成分の過酸化水素濃度はハイライトが35%、ピレーネが3.5%、ティオン オフィスが約23%とさまざまであり、光触媒の効果を用いた製品開発により過酸化水素濃度が低くなりつつあるのが特徴である。

参考文献
1) 久光 久,東光照夫:漂白法の理論と臨床テクニック オフィスブリーチとホームブリーチ.クインテッセンス出版,東京,2004.

https://www.dental-diamond.co.jp/item/858

著者プロフィール

ぱんだ歯科(愛知県北名古屋市開業)
須崎 明(すざき あきら)

【略歴】
平成18年3月 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
平成12年3月 愛知学院大学大学院歯学研究科修了、博士(歯学)の学位取得 
平成12年4月 愛知学院大学歯学部保存修復学講座 助手
平成12年4月 平成12年度 日本歯科保存学会奨励賞 受賞
平成13年4月 愛知学院大学歯学部附属病院審美歯科外来 医員
平成13年7月 2001年 The International Conference on Dentin/Pulp Complex, “Young Investigator Award” 受賞
平成14年4月 愛知学院大学歯学部保存修復学講座 講師 
平成15年9月 モンゴル国立健康科学大学 客員准教授
平成17年3月 愛知学院大学歯学部保存修復学講座 非常勤講師
平成17年4月 ユマニテク歯科製菓専門学校 非常勤講師
平成17年4月 ぱんだ歯科 院長
平成17年5月 東海歯科医療専門学校 非常勤講師
平成30年5月 医療法人ジニア ぱんだ歯科 理事長
現在に至る

【所属学会】
愛知学院大学歯学会会員 
日本歯科保存学会会員
日本レーザー歯学会会員(専門医・指導医)
日本歯科審美学会会員(認定医)
日本歯科理工学会会員
IADR(国際歯科研究学会)会員
JADR(国際歯科研究学会日本部会)会員
Academy of Operative Dentistry(米国保存修復学会)会員
日本接着歯学会会員
日本臨床歯周病学会会員
日本歯周病学会会員
日本顕微鏡歯科学会会員
IADFE(International Academy for Dental Facial Esthetic)Fellow