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2018年1月号 「舌縁部の表面不整な腫瘤」
1.舌化膿性肉芽腫

 化膿性肉芽腫(Pyogenic granuloma)は、皮膚や口腔粘膜に発生する隆起性の病変で、膿原性肉芽腫や毛細血管拡張性肉芽腫、あるいは、しばしば妊娠女性に見られることから、妊娠性肉芽腫とも呼ばれる。
 口腔領域では歯肉、頬粘膜、口唇および舌が好発部位とされ、有茎性のものが大多数で、軟らかい肉芽腫状を呈することが多い。易出血性のものや、表面にびらんや潰瘍を伴うもの、また、乳頭状の発育をするものもある。過去の報告では、口腔の化膿性肉芽腫の初診時の臨床診断率は20%程度で、血管腫や乳頭腫、線維腫の臨床診断名がつけられる傾向や臨床診断不能とされる症例もあるとされている1)。さらに、腫瘤は急速に拡大・発育 することが多く、骨形成を伴った症例もあり、悪性腫瘍との鑑別が必要なこともある。成因はあきらかになっていないが、誤咬の既往や妊娠時の発生が報告されており、外傷による感染や、性ホルモンの関係が指摘されている。病理組織学的にも一定の見解は得られていない。
 疣贅型黄色腫(Verruciform xanthoma)は、口腔粘膜と生殖器皮膚に好発する。臨床診断形状は多彩で、潰瘍を生じた場合、臨床的にも病理的にも初期がんと診断されることがあると指摘されている2)。また、静脈性血管奇形(Venous malformation)も舌腫瘤として認められることがあり、誤咬での出血などの症状や静脈石が存在することがある。腫瘤の生検前には止血困難などを避けるためにも、慎重な鑑別が必要である。
 舌の腫瘤に対しては、常に舌がんを念頭において診療に当たらなければならないが、とくに妊婦おいては、適切な検査、診断、治療、管理のために慎重な臨床診断が必要である。
 本症例は妊婦であり、臨床的に化膿性肉芽腫を疑うことから、腫瘤の基部で切除した(図2)。病理検査では、一部が重層扁平上皮に覆われた、広い潰瘍を伴う毛細血管の集合からなる病変がみられた。悪性所見は認められず、化膿性肉芽腫との確定診断を得た。
 術後2年経過するが再発はなく、経過は良好である。

【参考文献】

1)稲木勝英:口腔内化膿性肉芽腫の検討.日耳鼻,94: 1857-1864,1991.
2)田中陽一:口腔病理のpitfallと診断クルー(総説).診断病理,30:8-18,2013.

(謝辞)

診察・執筆にあたり、ご協力・ご助言をいただきました、熊本大学非常勤歯科医 児玉 彩先生に深謝いたします。

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図2 切除(直後)の口腔内写真
図2切除(直後)の口腔内写真


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