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2017年6月号 口腔関連疾患
3.狭心症

  問診ならびに触診において、無痛開口域が40oあり、関節雑音やあきらかな顎関節症状は認められないため、顎関節症は否定的である。また、パノラマX線写真像にて唾石像はなく、唾仙痛や唾腫といわれる唾石症特有の症状を認めなかったことから、唾石症は否定的である。加えて、パノラマX線写真像にてあきらかな病変がみられず、また、血液検査にてCRPやWBCも正常値であり、口腔内に腫脹や排膿もなく、炎症は考えにくい状況であり、下顎顎炎も否定的である。

  全身所見で軽度の背部痛を訴えており、また、疼痛時間が10分程度であったことから下顎部の疼痛は放散痛と診断し、狭心症を疑った。そこで、当院循環器科を対診した。循環器科にて負荷心電図施行したところ、ST部分の下降やT波の逆転を認めたため、狭心症と診断された。

狭心症とは:狭心症は、心臓に栄養と酸素を供給する動脈である冠動脈が、高血圧、高脂血症、高尿酸血症などや、ストレスまたは加齢により、心臓の血管の内壁に粥腫といわれるプラークによって血管が狭くなることで血液の流れが悪くなり、心臓の筋肉に酸素の供給が不足し、胸の痛みや圧迫感を生じる。この変化が数分から数十分続く一時的な状態が、狭心症である。

狭心症の症状:心臓に流れる血流が滞ることにより心筋が酸素不足になり、「胸が痛い」、「胸がしめつけられる」、「胸が圧迫される」、「前胸部が焼けるような」などの左前胸部胸痛が典型的である。また、胸の中央、左肩、後頭部、首、下顎、歯、みぞおちなどに放散痛が起こることもある。狭心症の疼痛は、数分から長くても10分程度で治まるといわれている。

  また、高齢者や糖尿病を患っている患者が狭心症を発症した場合、痛みを訴える自律神経が障害されているために痛みを自覚しにくくなっていて、胸痛や放散痛の症状がまったくない場合もあり、狭心症発作があっても気がついていない患者もいる。そのため、問診の段階で高血圧や心臓弁膜症などを有している高齢の患者には、階段昇降や坂道歩行などの日常生活活動時や起床時に、胸痛や胸部圧迫感がないかを確認することが重要である。

狭心症の重症度評価:狭心症発作が起こるリスクは、冠動脈の動脈硬化の状況によって変わる。動脈硬化が進行していれば、軽度の運動量でも起こる。そのため、CCS(カナダ心臓血管協会)の機能分類が有用である(表1)。


表1 狭心症の重症度分類(カナダ心臓血管協会)
ClassI 歩行や階段の昇降などの通常の身体活動で狭心痛は認めない。急激や過激な身体活動、長時間継続した身体活動をすると狭心痛がある
ClassII 軽度の身体活動の制限がある。急歩行したり階段の昇降や坂を登ると狭心痛がある。起床後1時間以内に歩行すると狭心痛がある
ClassIII 著明な身体活動の制限がある。階段を1階分上がると狭心痛がある
ClassIV 必ず身体活動で症状が出現する。安静時にも狭心症症状がある


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