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2017年2月号 鼻の違和感と鼻水が出る
3.慢性歯性上顎洞炎

概要:歯性上顎洞炎は、慢性副鼻腔炎患者の約10%に存在する。歯根部の炎症が上顎洞内に波及し、鼻汁、後鼻漏、鼻閉、悪臭、頬部痛などの臨床症状を呈する疾患である。慢性副鼻腔炎は、鼻と副鼻腔を繋いでいる自然口という排泄路が、細菌感染やアレルギー反応などによる粘膜腫脹により閉鎖し、副鼻腔に膿が溜まるのが原因である。原因因子として、未処置のう歯、歯原性異物、不適切な根管処置よる根尖病巣やインプラント治療の不備などが挙げられる。

診査・診断:鼻汁、後鼻漏、鼻閉、悪臭、頬部痛などの臨床症状、原因歯の存在、画像診断で、総合的に診断される。とくに画像診断は、歯と上顎洞の位置関係を明瞭にする有用な検査である。しかし、デンタル・パノラマX線写真はいずれも二次元的画像という限界があり、必ずしも有用ではない。一方、歯科用コーンビームCTは、歯と上顎洞の位置関係について三次元的に確認することができる、最も有用な検査である。

治療法:慢性副鼻腔炎においては、抗菌と粘膜の抵抗力向上のため、マクロライド系抗生物質を少量で1〜2ヵ月間内服する。歯性上顎洞炎においては、根管治療による原因の除去および排膿路の確保のために、原因歯の抜歯を行う。治療効果が見られない場合は、副鼻腔の自浄作用を取り戻す副鼻腔手術を行う。

治療経過:本症例では、歯科用コーンビームCT画像により、左上6の遠心頬側根において根管充填剤がまったく認められなかったが、未処置根管を確認できた。これが根尖部透過像の原因である(図3)。そこで、同部位の補綴物を除去し、根管治療を行った。根管充填後、左側上顎洞における不透過像と鼻における不快症状は完全に消失した。また、肥厚した洞粘膜の腫脹により中鼻道自然口ルートが閉塞されていたが、根管治療により解消され、抜歯や内視鏡下副鼻腔手術をすることなく、副鼻腔の自浄作用を取り戻すことできた(図4)。


図3 初診時のCT像
図3 初診時のCT像
図4 処置後のCT像
図4 処置後のCT像

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