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Q&A
保存(2013年2月号)
Q コンポジットレジンの色調変化
●歯冠修復材料として用いられる光重合コンポジットレジンは、経時的な色調変化を起こすことが知られています。色調変化の原因として、どのようなことが考えられるのでしょうか。また、日常の食習慣として定着している飲料物による浸漬は、どの程度まで色調変化に影響を及ぼすのでしょうか。
──長野県・I歯科クリニック
A
  コンポジットレジンはマトリックスレジン(ベースレジン)、フィラー、重合触媒(3級アミン、カンファーキノン、過酸化ベンゾイル)、着色剤などから成っています。各成分が色調変化に関与しますが、製品により、成分の種類、構成、配合比率が異なりますので、一概に特定の成分だけを原因にすることはできません。色調変化には、レジン材料自体の「変色」と着色物質の「付着」や「浸透」があります。これらの境界は曖昧であり、また同時に進行しますので、臨床で区別することは困難といえます。
  一般的にレジン(合成樹脂)は、さまざまな環境下に曝露されることにより、本来備わっていた特性(色調も含む)が経時的に失われます(いわゆる劣化)。レジン材料の劣化を促進させる原因として紫外線と熱が挙げられます。マトリックスレジンが紫外線を吸収すると、ポリマー分子に切断と架橋による構造変化や酸化が生じて変色劣化を起こします。また、レジン材料の熱膨張係数は無機セメントに比較して大きく、熱による膨縮変形も変色の一因と考えられます。
  次に、マトリックスレジンなどの高分子物の特徴に吸水性(膨潤性)があります。カレー(ターメリック)、赤ワイン、コーヒー、紅茶、緑茶などのポリフェノールを含んだ着色性のある飲食物は表面の凹凸に付着するだけでなく、吸水により材料に浸透します。浸透量はレジンの種類や劣化の状態によって違いますが、赤ワインではアルコールによる脱水作用も着色に影響すると考えられています。更に、吸水によりマトリックスレジンとフィラーとの結合(シロキサン結合)が加水分解され、光の透過性、散乱、屈折などが変化して色調に影響を与える可能性もあります。
  臨床では、劣化によるコンポジットレジンの変色を回避することは困難ですが、着色や浸透は研磨操作を正しく行うことで、ある程度は抑制できると考えられます。充填直後の表面は吸水しやすいマトリックスレジンでほぼ覆われています。研磨によりマトリックスレジンに充填されたフィラーが表面に露出しますので、マトリックスレジンの面積を減少させることができます。隔壁材(マトリックステープなど)の圧接面は表面粗さが小さいため着色物質が付着しにくいのですが、圧接面はマトリックスレジンが多いことから、滑沢でも研磨操作を行うべきです。
  研磨を行う時期ですが、コンポジットレジンの重合は十分な光量を照射しても100%完了するわけではなく、重合反応は光照射後も継続しています。間接法の技工物(インレー、クラウン)では、製作過程で加熱することにより重合率を向上できますが、直接修復法でそのようなことはできませんので、重合が完了するまである程度の期間(1〜2日)が必要になります。つまり、充填当日に研磨を行うと研磨面に重合阻害が生じて重合率が低下し、修復物表面は吸水しやすく、変色を起こしやすい状態であるといえます。コンポジットレジン修復は即日研磨が可能であるという利点がありますが、充填当日は咬合調整、形態修正までに留め、最終的な仕上げ研磨を次回来院時に行うことで飲食物による変色を最小限に抑えられます。併せて、患者さんには、当日は着色の強い飲食を控えるように指示すると効果的です。
  メインテナンスでは、表在性の変色や着色であれば再研磨で改善できます。窩縁外に溢出したコンポジットレジンは、仕上げ研磨後に残存する場合があります。時間の経過とともに、飲食物の色素が溢出したレジンと歯面との間に浸入すると着色が生じて識別しやすくなるため、必要であれば溢出したレジンの除去も含めた研磨を行います。また、長期経過した修復物は機械的応力(咬耗や摩耗)によりフィラーの脱落が生じて表面性状が粗造になっていることも考えられますので、この場合も再研磨を行うことで着色の防止になります。着色は歯垢、歯石の介在によっても生じますので、プラークコントロールも重要な防止方法の1つといえるでしょう。

鈴木雅也1) ・ 新海航一1) ・ 小菅直樹2) ・ 高橋正志2)
1)日本歯科大学新潟生命歯学部 歯科保存学第2講座
2)日本歯科大学新潟短期大学 歯科衛生学科

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