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TopQ&A法律 > インターネットサイトにおける風評被害(2012年7月号)
Q&A
法律(2012年7月号)
Q インターネットサイトにおける風評被害
●インプラント治療の予後をめぐる質問について、ある患者とEメールでやり取りしていたところ、私の治療説明の一部を否定的に曲解され、激昂されてしまいました。その後、ある匿名掲示板に、当院に対する事実無根の誹謗中傷が頻繁に書き込まれるようになりました。当院の医院名、所在地、私やスタッフの実名も挙げられています。書き込みの内容から判断してその患者によるものと思われますが、匿名のため断定できません。今すぐ書き込みを削除し、また書き込んだ者に対して損害賠償請求したいのですが、どのようにすればよいでしょうか。
──茨城県・Nデンタルオフィス
A
  先生や医院等を誹謗中傷する書き込み(以下「当該書き込み」といいます)は事実無根の誹謗中傷を内容とするものとのことですので、当該書き込みを書き込む行為は、民法上の不法行為、刑法上の名誉毀損罪や業務妨害罪に該当する可能性があります。
  そのため、警察に被害届や告訴状を提出する方法もありますが、民事上の手段としては、まずはその匿名掲示板の管理・運営者等(以下「プロバイダ等」といいます)に対し、当該書き込みの削除を要請します。削除要請を受けたプロバイダ等は、むやみに削除してしまうと書き込んだ者から損害賠償請求されかねないため削除の適否を検討しますが、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任限定法)によれば、(1)対象である書き込みによって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき、または(2)プロバイダ等が当該書き込みの発信者に対し当該書き込みを示して削除に同意するかどうかを照会した場合において、発信者が当該照会を受けた日から7日以内に同意しない旨の申出がないときには、プロバイダ等は書き込みを削除しても発信者に対して損害賠償責任を負わないとされています。
  次に、当該書き込みの発信者に対する損害賠償請求については、まずは発信者を特定する必要があります。書き込みなどで権利侵害されたと主張する者は、(1)侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき、かつ、(2)当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるときには、プロバイダ責任限定法に基づき発信者情報開示を請求できます。
  開示請求の相手方ですが、通常、匿名掲示板のプロバイダ等は書き込んだ者の住所・氏名等の特定に足りる情報を持っておらず、また、匿名掲示板の書き込みから直ちに発信者の住所・氏名等の情報を保有している発信者の契約しているプロバイダ(経由プロバイダ)は特定できませんので、まずは匿名掲示板のプロバイダに対して当該書き込みに関するIPアドレスの開示を求めます。IPアドレス情報を取得することで、当該書き込みを書き込んだ者が契約している経由プロバイダが判明します。そのうえで、経由プロバイダに対して当該書き込みの発信者に関する住所・氏名等の情報開示を求めます。このように、匿名掲示板のようなサイトの書き込みに関しては、2段階の手順を踏む必要があります。
  もっとも、発信者から損害賠償請求されるリスクを嫌い、プロバイダ等が発信者情報を任意で開示することはほとんどありません。そのため、前述の情報開示請求は、仮処分または訴訟等の手続きを要することが大半です。
  また、仮に当該書き込みを削除しても、ネット上の書き込みはコピー・ペーストされて拡散し、キャッシュにも残ります。そのため、このように手間と時間を費やしても、当該書き込み自体をネット上から根絶することはほぼ不可能です。この点は、法律上及び技術上の限界と言わざるを得ないところであり、残念ながら実際的な対策がない状態です。

金田 英一銀座誠和法律事務所

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