衛生士,歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

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歯科医師が病気を見つけるとき 6
●東海大学医学部口腔外科学教室 佐々木次郎 + 山崎浩史
くも状血管拡張 肝硬変

図1a
上胸部のスパイダー

図1b
上胸部のスパイダーの模図。実際は長径が3くらいと小さいので、写真に撮るのは困難。顔面(目の下)にも出やすい

図2

図3
図2、3 図1を接写したもの。村上 正カメラパーソンの撮影。上手に撮ってくれました (筆者注:平成11年4月から男女雇用機会均等法が施行されたので、カメラマンということばは使ってはいけないと注意を受けた。女性の場合には、カメラウーマンと言うらしい)
 肝硬変では、首や上胸部の皮膚あるいは顔面の皮膚に「くも状血管拡張」がみられることがある。本号では、歯肉潰瘍で受診した患者さんの上胸部に、この「くも状血管拡張」があったので肝硬変ではと予想し、事実、そのとおりであった症例を紹介する。「くも状血管拡張」は「くも状血管腫」ともいうが、私たちは蜘蛛の巣ということで、スパイダーと称している。
◆◆◆ 症例 67歳、男性 ◆◆◆
 1月7日紹介受診。上顎歯肉と下顎歯肉に潰瘍があり、3ヵ月前から存在していたが、今般、出血を伴うようになって受診し、東海大学病院口腔外科へ診療情報提供書を持って来院した。初診担当の太田講師が、「歯肉の潰瘍は癌でしょう」といって、外来担当の山崎と佐々木も、診療担当となった。全身状況と口腔内をざっと拝見した。
 まず、主訴の出血であるが、歯肉の潰瘍からの微量の出血がある。上部消化器(食道)からの出血もあるかもしれないが、これは内視鏡をお願いすることにしよう。顔面と首をみると、首から上胸部にかけて典型的なスパイダーがみられる。
 「肝臓の病気はありませんか」との質問には、「慢性の肝炎といわれていますが、特別な治療は受けていません」との返事。服用中の薬剤は内科で処方されている降圧剤が2剤。
テノーミン 一般名・アテノロール
カルデナリン一般名・メシル酸ドキサゾシン
 さっそく写真センターにつれていって上胸部のスパイダーを写したのが図1、接写したのが図2、3である。検査の結果を待つまでもなく肝硬変の存在が判ったので、消化器外科に依頼した。
 依頼の目的は、
1.肝硬変の進行度はどの程度か。
2.食道静脈瘤は? 腹部静脈瘤は?
3.その結果として、歯肉癌は手術可能か。
 入院精査の結果は、「肝硬変は進行していて硬化療法の範囲を超えていて手がつけられない。静脈瘤は食道にも腹部にもあり、その一部はすでに破綻をきたして出血している」ということで、歯肉癌も、もちろん手術はできないことが決まった。
 患者さんの家族と、余命をどう生きるかということで、今の時期に家に帰ってはと相談しているうちに、腹部静脈瘤からの出血で亡くなられた。外来を初診されてから1ヵ月は経っていなかった。

[注]
 肝硬変については本誌1995年2月号(No.261)の「検査値を読む肝硬変」に掲載(くも状血管腫の模図も)した。
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