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2017年3月号 頬部の腫瘤
2.外歯瘻

処置および経過:同日から、消炎処置(LVFX 400mg/dayとCAM 400mg/dayを7日間、CAM 400mg/day7日間内服投与)ならびに左下6の根管治療を開始。消炎後、瘻孔閉鎖術ならびに左下6の抜歯術を施行。抜歯窩には、頬側および舌側皮質骨に一部骨欠損がみられ、瘻管を摘出した(図4)。その後、再発の徴候はみられず経過良好である。

  外歯瘻がいしろうは、歯性の化膿性炎症(根尖病巣や歯周病、顎嚢胞の感染、抜歯後感染、腐骨など)が限局化して膿瘍を形成し、これが自壊することで膿汁を排出する瘻孔ならびにその通路である瘻管が口腔外(顔面皮膚)に形成されるものをいう。多くの症例は自覚症状がない。検査は、瘻孔からゾンデを挿入して口腔内の原疾患を探し、瘻孔にゾンデを挿入した状態で、X線撮影にて瘻孔と原疾患の関係を確認する。

  また、外歯瘻は、皮膚面に瘢痕を伴った陥凹を形成し、周期的に膿汁を排出する。このために、治療は、皮下膿瘍をすみやかに切開、排膿ののちに瘻孔を含めて切除、瘢痕修正を行うが、これだけでは外歯瘻が消滅しないために、瘻管に繋がった原疾患の治療が必要となる。治癒過程には、原因歯あるいは歯性の化膿性炎症の位置や歯根の長さ、周囲筋肉の付着位置や厚さ、皮下組織の雛疎性、感染の強さ、皮質骨の厚さ、重力の影響などが関連するとされている。

  本疾患は、歯あるいは歯性の化膿性炎症の症状がみられず、しかも原因歯から離れた部位に病変が生じるため、歯科領域の疾患であるにもかかわらず、患者の半数以上が最初に皮膚科、外科など医科各科を訪れている。医科各科では、本疾患が念頭にないために誤診・誤治療の結果として、繰り返しの切除、生検や抗菌薬の長期使用など、患者に不必要な負担を強いる症例が報告されているので、十分な配慮が必要である。


図4 術中口腔内写真。皮膚表面から下顎骨に繋がる瘻管ならびに頬側下顎骨に骨吸収がみられる
図4 術中口腔内写真。皮膚表面から下顎骨に繋がる瘻管ならびに頬側下顎骨に骨吸収がみられる

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