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2016年12月号 側頭部の腫脹
2.ガス壊疽

  ガス壊疽は、ガス産生菌による進行性の軟部組織感染症で、組織内にガスを認める。炎症は皮下から筋組織に及び、狭義にはクロストリジウム属の感染に起因するものを指すが、広義には非クロストリジウム属に起因するものも含まれる。臨床所見としては、局所の腫脹、疼痛とともに局所ガス触知(圧迫による握雪感)を認め、病巣は急速に拡大する。診断には、CTでガス像を確認することが重要である。対応が遅れると敗血症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全により死に至ることがあるため、迅速な診断と処置および、抗菌薬の投与とともに、病巣の開放処置を行う必要がある。

  本例では、智歯抜歯窩からの排膿と壊死組織(索状物)を確認し、採血データで炎症所見が高く、側頭部の圧迫による握雪感およびCTでガス像を確認したことから、抜歯後感染によるガス壊疽と診断した。皮下気腫および血腫は、本例の臨床所見とは合致しない。蜂窩織炎は、表皮から皮下脂肪組織浅層に主座を置く疾患である。

処置および経過:即日入院管理とし、抗菌薬の投与を継続した。INRが高値であったため休薬とし、手術当日までヘパリン置換をして凝固時間をコントロールした。試験穿刺で膿汁が引け、細菌培養ではPrevotella oralisが検出された。幸い血液培養で陰性であったが、弁置換術後で心内膜炎のリスクがあるため、抗菌薬予防投与のうえ、全身麻酔下で口腔外消炎手術を施行した(図5、6)。術後は連日洗浄を行い、ワーファリンを再開した。全身状態は良好で炎症症状も改善してきたため、術後1週間でドレーンを抜去し、側頭部の治癒をみて術後3週間後に退院となった。

  高齢者や基礎疾患を有する患者に対して観血的処置を行う場合は、処置時間や手術侵襲の程度、出血のコントロール、感染など十分に配慮することが重要である。観血的処置に際して一般歯科医院でリスクがある場合は、地域の病院歯科や大学病院と連携をとり、治療することが重要であると思われた。

図5 側頭筋の壊死を認め、デブリードマンを施行
図5 側頭筋の壊死を認め、デブリードマンを施行
図6 側頭部から側頭窩下、抜歯窩にドレーン挿入
図6 側頭部から側頭窩下、抜歯窩にドレーン挿入

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